東京杉並の閑静な住宅地にいまも武蔵野の面影を色濃く残す一角がある。そんな都会の一角にひっそりと佇む屋敷林の幼稚園が中瀬幼稚園である。
幼稚園不足の1966年に開園し今年で50年目を迎える。
園長の井口佳子先生はこの園を地球の縮図と考え、親たちの協力のもと子どももおとなも“ここにいるのが楽しい”という空間創りを進めてきた。
地道で丹念な手作業によって創られたその園庭は、さながら園長の分身のようでもあり、生命力に満ちあふれ、いつものように子どもたちが雑草の小道を元気に駆け抜けていく!
子どもたちはこの庭でさまざまな体験を通してたくましく成長していく。
そう、まさにここは子どもの“サンクチュアリ(聖地)”なのだ。
本来、子どもを見つめるということはいつも未完で終わりのないことである。
この映画は、過去から現在、そして未来に向かって歩み続ける中瀬幼稚園を長期にわたって見つめた感動の長編ドキュメンタリー映画だ。
いまこそ子どもに関わるすべての方、必見の映画といえる。
“雨は見えるのにどうして風は見えないの?” 幼児期は、五感という感覚に大きく影響を受けて生きていると考えるならば、子ども達を知識の世界へと急がせるよりも、様々な感覚を十分に体験できるような、 環境と時間を保障してあげることが必要ではないだろうか。
やがて、子ども達は、様々な体験を積み重ね、知識も入って、モノを科学的、物理的に認識するようになっていく。すると絵を描く時、目に見えないものは描かなくなる。それが自然な発達の姿である。
“雨は見えるのにどうして風は見えないの?” そんなことが言えたり描いたりできる時は今だけだと、ほほえましく思いながら、 ゆっくりと子ども達と向きあっていきたいと思う。
井口佳子(中瀬幼稚園 園長)
「子どもは風をえがく」は、見るだけでもとても愉快になれる映画である。
素晴らしい幼稚園の無邪気な子どもたちの、やることなすことみんな面白い。 そして考えると、とても大事なことがそこでは語られているのだ!
佐藤忠男(映画評論家)
子どもたちには、草むらや泥んこ遊びがよく似合う。
四季を通じて思いっきり遊ぶ子どもたちの姿に、思わず笑ってしまうが涙も滲んでくる。
優しい気持ちになる映画だ。
子どもたちの未来がずっと平和であるようにと祈らずにはいられない。
上遠恵子
(翻訳家、レイチェル・カーソン日本協会 会長)
自然の営みに敬意をはらい
小さな命とのふれあいや「本物」との出会いを通して心と知恵を育む
このような保育こそ
文化的で最先端の保育なのだと 私は思います
河邉貴子(聖心女子大学 教授)
子どもたちにとってこの世界はとても魅力的で、遊びはただの遊びではありません。たとえば、地面に水たまりがあったら水路を作ったり、土の硬さや質に興味をもったり。土の中から虫の幼虫が出てきたら、目が輝かせ、すぐに関心はそっちに移ります。遊ぶなかで学び、育つ。まさに、子どもは瞬間を精一杯生きているのです。
私は高知の田舎育ち、遊び場は山や森、川。自分は常に自然の一部でした。そんな幼少の記憶からも、きっと子どもは自然とつながっていて、大人には見えないものが見えていると思うんです。でも、今の環境はあまりにも自然と離れすぎです。遊び相手はテレビゲームとか、ゲームは見た目にはケガはしないけど、リアルな世界の経験が少ないうちにバーチャルの世界で遊ぶというのは、実際は一番危険な遊びだと思います。
子どもたちに対して、大人はどうしたらよいのでしょう。
たとえば、中瀬幼稚園では あれをしなさい、これをしなさいといった指導は一切しません。
まず、子どもたちの様子をよく見て、次に 『これはどうかな』 と問いかけます。
すると子どもたちは考え、物事の回路がつながり、遊びが広がっていくのです。
幼児期の体験は一生もの!人を育てるということについて、我々はもっと真剣に考えないといけません
まずは子どものありのままの姿を見て感動してもらい子どもが育つ環境を考えるきっかけになればいいと思います。
そして、我々おとなは、子どもたちに戦争のない平和な未来を残さねばなりません!!
筒井勝彦(映画監督)